10.ハンターズムーン

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「今やこの国は私の物になりつつある……あと少しで、完成するのです。皆が勤勉に正しく生きる、理想郷が。あの人のおかげでね」 爽言い放つと、二人は礼拝堂を後にした。再び二人きりになった礼拝堂で、フランが「もう喋ってもいい?」と問うようにリュクレーヌの肩を叩く。 「あぁ、何だ?」 「ねぇ、良いの?二人共帰っちゃうよ?いつもみたいに「話は聞かせてもらったぜ!」とか言いながら出てくるところじゃないの?」 二人を止め、逮捕するために颯爽と現れ、全ての証拠を突き付け 「いいんだよ。忘れたか?この潜入捜査は証拠を掴むためのもの。証拠さえ手に入ればいいんだ」 リュクレーヌはにやりと笑いながら、カメラと小型の録音装置を見せた。きっとこの中に先ほどの一部始終が収められているのだろう。 「いつの間に……」 「心配しなくてもこの証拠は明日の朝、信者たちの前で伝える。このまま騙されたままじゃまずいからな」 とは言え、善は急げと言ったもので、真実を伝えなければゴーレムにされる犠牲者が増える。 うかうかはしていられない。 「というわけで、帰って写真の現像だ。急ピッチでやるぞ。あぁ、帰るまではそれは着けとけよ。外を歩いている人間が居るだけでも怪しまれそうだ」 ペストマスクを外そうとしたフランに忠告だけをして、道中気を付けながら二人は事務所へと帰った。  
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