11.ビーバームーン

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「……しまっ!?」 「なっ……」 予想外の事態だった。瓦礫はリュクレーヌにも追いつかないスピードで到達し、建物は崩壊した。 その建物は、学校だった。今日のマスカによる襲撃が始まってから、絶対に外には出るなと指示を受けていた数人の子供たちが居る。 瓦礫は、ガラガラと無機質な音に加え、ぐちゃりと生々しい音を立てて崩れ去った。 「あ……」 下敷きになった子供たちは跡形もなくなっていた。体中を流れていたであろう、血だけが瓦礫と地面を紅く染め上げていた。 ──一体、何人犠牲にすれば気が済むんだろう? フランは、命を救えなかった悔しさで歯ぎしりをして、拳を地面に叩きつけた。 膝まずいて肩を震わせるフランにリュクレーヌが寄り添うように近づいた。 すると、フランは「大丈夫」とだけ掠れる声で零した。 「今はとにかく死体をアマラ軍に運ぼう」 「そうだな……」 死体がファントムの手に渡ってしまえば、新たなマスカが増える。 最も避けなければならない事態だ。戦闘中に出た死体は回収。アマラの中で新たに決められた。 死体を運ぶのはリュクレーヌだが、フランの心には鉛のように重たい後悔が積み重なっていた。 「言っておくけど、お前のせいじゃないからな」 「うん……」 そんな心中を察しているリュクレーヌは、呪文のようにいつもフランに声をかけていた。  
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