11.ビーバームーン

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◆   死体をアマラ軍へと引き渡した後にはマスカは撤退したらしく、街は束の間の平穏を取り戻していた。 二人は今の内に、と事務所へ直帰した。 「たくっ……日に日に勢力が増してるな」 「どうして……こんな事に」 「アマラ軍も一度壊滅寸前まで追い込まれているからな」 テレーノ教とネオン新聞社によってアマラ軍は裏切り者だとゴーレムに襲撃を受け、追い込まれて、組織としてバラバラになろうとしていた。 軍だけではどうにもならない。当然、フランやクレアにも協力要請が出ている。 軍に属していなくとも、かつてないほどの脅威をもったマスカ達に、立ち向かい市民を守るために戦っていた。 「僕も戦える限りは戦うけど」 「無理はするなよ」 労いの言葉を掛ける。 いや、無理をするなと言う方が無理かもしれない。 それでも、今のリュクレーヌできる事は限られていた。 ファントムたちはもう、姿を偽り、人間に紛れることなどやめていた。 するとどうだろう。リュクレーヌが推理をする事はもうない。 つまり、リュクレーヌにはフランをサポートする事しか出来ない。その状態がどうにももどかしい。 「……俺に出来る事は、もう」 リュクレーヌが俯きながら呟く。 「仕事ならあるぞ」 すると、脳天から低い声が響いた。
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