106人が本棚に入れています
本棚に追加
/743ページ
◆
死体をアマラ軍へと引き渡した後にはマスカは撤退したらしく、街は束の間の平穏を取り戻していた。
二人は今の内に、と事務所へ直帰した。
「たくっ……日に日に勢力が増してるな」
「どうして……こんな事に」
「アマラ軍も一度壊滅寸前まで追い込まれているからな」
テレーノ教とネオン新聞社によってアマラ軍は裏切り者だとゴーレムに襲撃を受け、追い込まれて、組織としてバラバラになろうとしていた。
軍だけではどうにもならない。当然、フランやクレアにも協力要請が出ている。
軍に属していなくとも、かつてないほどの脅威をもったマスカ達に、立ち向かい市民を守るために戦っていた。
「僕も戦える限りは戦うけど」
「無理はするなよ」
労いの言葉を掛ける。
いや、無理をするなと言う方が無理かもしれない。
それでも、今のリュクレーヌできる事は限られていた。
ファントムたちはもう、姿を偽り、人間に紛れることなどやめていた。
するとどうだろう。リュクレーヌが推理をする事はもうない。
つまり、リュクレーヌにはフランをサポートする事しか出来ない。その状態がどうにももどかしい。
「……俺に出来る事は、もう」
リュクレーヌが俯きながら呟く。
「仕事ならあるぞ」
すると、脳天から低い声が響いた。
最初のコメントを投稿しよう!