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「ノスクルム邸だよ。俺の実家」
ノスクルム邸。リュクレーヌ──ルーメンとルーナエが生まれ育った家にヒントがあるという。
例え、ルーナエの居場所が分からなくとも、ファントムやマスカ制作に関する手掛かりくらいは有るだろう。
その中に、ファントム消失に関する情報があれば最高だ。ある、とは限らないが、リュクレーヌには自信があった。
わざわざ、フランに銃を託した事、自分とフランを引き合わせたことが、きっと鍵となっているのではないかと思ったからだ。
「リュクレーヌの実家!?」
「ただ、郊外だからな。ちょっと遠出になる」
ノスクルム邸はロンドン郊外の落ち着いた場所に構えていた。今回の調査は遠征とも言える。
遠出ともなれば、リュクレーヌのマスカとしての能力を使うべきだろうかとフランは問いかける。
「じゃあ、空飛んで行く?」
「いや、外にはただでさえマスカがうろついている。ファントムに見つかったら厄介だ。こっそりと行こう」
外に出れば、マスカが大量にいる。そんな中、空を飛ぶ人間など居たら、真っ先に標的にされるだろう。
それならば、出来るだけ目立たないように、確実に実家へと向かう事が安全だと思えた。
「あっ、長旅になるかもしれないから荷造りしっかりしておけよ」
一日で到着するような道のりではない。途中で宿に泊まったりもするだろう。
念のための指示をして、リュクレーヌは食後の甘いココアを口にした。
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