11.ビーバームーン

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◆   翌日には事務所を出た。暫く出かけますという張り紙を入口のドアに貼って。 二人はロンドンの街を暫く離れる。郊外へと出るにつれ、少しずつ平和な街へとなっていた。 やはり、マスカの攻撃によって荒廃していたのはロンドンの中心部であるのだろう。 大きなトラブルもなく、ノスクルム邸へと着実に向かっていた。 小さなトラブルならあった。出発して二日目の夜だったか、宿の部屋がほとんど埋まっており、開いているのはダブルの部屋のみという事があった。 流石に一つのベッドに二人で寝るわけにもいかず、フランはリュクレーヌにベッドを譲り、部屋に備え付けられていたソファで眠ることにした。 秋も深まり夜は冷えるだろう、とせめてものの毛布をフランに貸した結果、リュクレーヌは軽い鼻風邪を引いてしまったのだ。 その日は朝から「ぶえっくしょい」と派手なくしゃみをしていたが、翌日にはすっかり回復したようだ。 災いはそれくらいだ。順調に道のりを進み、馬車と徒歩を駆使して、四日目にはノスクルム邸へと到着した。  
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