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リュクレーヌは皮肉っぽく言う。事件が起きてしまったから、マスカになってしまったから資産家のお坊ちゃん生活はわずか十五年で終わってしまったのだ。
事件の事をフランは再び思い出す。ある、疑問があった。
「ねぇ、ルーナエさんは、どうしてリュクレーヌになりたかったんだろう?」
「そりゃ、俺の方がモテ──」
「嘘つかないで。真面目に聞いているんだ」
「なんで嘘って分かるんだよ」
リュクレーヌは拗ね、子供のように唇を尖らせた。
「それより、今は手掛かりを探すんだろ?」
「そうだったね。何処を探そうか」
「ここから近い場所なら、そうだな……事件があった食堂だな。ルーナエの部屋はその奥だからな」
「なんで家の中で近い場所と遠い場所があるんだよ……」
本来の目的である、ルーナエに関する手掛かりを探すことにした。
再び骨とう品の並ぶ廊下を歩き、食堂へと向かう。
廊下は行き止まりとなり、食堂の前まで来た。
扉は閉じている。それだけではない。
「あれ?鍵がかかっているよ」
木製の扉には、縦に長いドアの取手には何重にも鎖が巻き付けられ、南京錠が掛けられていた。
「これはまた派手に閉じているな。まぁ、あんな悲惨な兄弟喧嘩があった場所なら当然か」
愛する息子同士の殺し合いなど両親にとっても封印したい過去なのだろう。現場である食堂に二度と立ち入れないように封をしてあった。
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