11.ビーバームーン

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食堂のドアを閉め、突き当りの通路を左へと進む。 このまままっすぐ進めばルーナエの部屋だ。その隣はリュクレーヌの部屋なのだが。 「ここだよ。ルーナエの部屋」 リュクレーヌが取手に手を掛けると特につっかえる事もなく、ドアノブは引かれる。どうやら施錠はされていないようだ。 「鍵は、掛かっていないね」 「開けよう」 「うん」 ギイと鈍い音を立てて、扉が開く。十年ぶりに入るルーナエの部屋だ。 「う……わぁ」 思わずフランが声を漏らす。無理も無いだろう。やけにおどろおどろしい雰囲気を纏っていた。 テーブルやベッドに黒と紫を基調にした布がいたるところにかけられ、厚く怪しい本が乱雑に置かれている。 部屋の一番奥には大きな鏡があった。鏡にも布が掛けられていた。 オカルトめいた、怪しい占いの館か、はたまたお化け屋敷のような雰囲気である。 そう、ルーナエは黒魔術を勉強していて、ファントムを呼び出してしまった。 一人で魔術を学び、ファントムという友人と、マスカを作り上げた現場がこの部屋である。 リュクレーヌはずかずかと部屋に入り、机の上を物色した。一冊の本のようなものを手に取る。 よく見ると表紙には「日記」と書かれている。 「リュクレーヌ?それは?」 「日記だよ。アイツのな」 「ルーナエさんの、日記……」 何が書いてあるのだろうか。フランには全く見当が付かなかった。 リュクレーヌはパラパラと速読をするようにページを捲る。その速さで何が分かるのだろうか、とフランは思ったが、リュクレーヌは日記を閉じた。 「日付を見る限り、十年前の四月あたりからの事が書いてあるな」 「事件の八ヶ月前だね。これに、ルーナエさんの動機やファントムとのやり取りや、マスカの創り方とかが載っているのかな……」
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