11.ビーバームーン

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「という事は、リュクレーヌが捕まってからの事が書いてあるんだね」 「そういう事だな。これも持って帰るぞ。あとは、そうだな……この辺りの怪しそうな本も持っていこう」 そう言ってリュクレーヌは本棚に入りきらなかったのか床に散乱した本を指さした。 どれも不気味な装丁であり、できれば手に取りたくないなとフランは感じた。 それでも、遠路はるばる調査に来て、重要と思われる証拠品だ。散らばる本の内比較的シンプルな表紙のものを手に取った。 表紙に書かれたタイトルは物騒なものだった。 「悪魔の腸……うへぇ、なんだろうこの本」 「恐らく全部黒魔術系の本だ。マスカ制作やファントムに関するヒントがあると思う」 「ところどころ読めない字でいろいろ書いてあるよ」 「魔術の言葉だろう。帰ったらブラーチに解読してもらおう」 リュクレーヌは早口で言って急かした。フランは彼の様子に違和感を覚える。口調こそ落ち着いているが、いつもよりも話す速度が格段に速い。 まるで焦燥に駆られているようだった。隠す様に焦るリュクレーヌはある意味初めて見るかもしれない。 「ねぇ、リュクレーヌ。さっきからどうしてそんなに焦っているの?」 本を拾い上げていたリュクレーヌはピタリと動きを止める。そのままフランの方を振り向かずに、背中を丸めて沈黙した。 「……あまり、居たくないんだよ。ここ」
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