11.ビーバームーン

23/60

106人が本棚に入れています
本棚に追加
/743ページ
ようやく言葉を口にする。掠れるような小さな声で。 「まるで、俺への恨みや妬みで呪いが行われてた場所みたいで、嫌な気分なんだ。早く出たい」 理由は明白だった。ここはルーナエがファントムとマスカを作った現場だ。 そして、その動機となったのは兄、ルーメンになりたいと願ったからである。 兄を殺し、自分が兄に成り代わる、悪魔との秘密の作戦が建てられた場所だ。 いわば、この場所でルーメンへの殺人計画が練られていた。部屋の雰囲気からも、まるでこの部屋自体がルーメンを──リュクレーヌを呪う、迷宮のような気さえしたのだ。 「リュクレーヌ……」 落ち込むリュクレーヌにフランは何とかしなければと声をかける。 「大丈夫だよ。ルーナエさんは、リュクレーヌの事恨んだりしていない。だって、心配してくれていたんだもん」 「心配?」 リュクレーヌが聞き返す。ルーナエが兄を心配していた。どうしてそのような情報をフランが知っているのだと。 「うん、この間ルーナエさんに会った時、リュクレーヌのこと──」 「ちょっと待て、この間だと!?それ、いつ会った!あいつに」 リュクレーヌはフランの両肩を掴んだ。コンセルタ家襲撃の後も、最近、フランはルーナエに会ったというのか。そんな事は初耳だとリュクレーヌは叫んだ。
/743ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加