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「六月の、僕がファントムに襲われた時だよ!意識がもうろうとしていたから、夢の中だけどね」
「夢ぇ!?」
リュクレーヌが声を裏返す。期待外れだと言うように。
重要な話だと思っていたのにただの夢だったという事実にため息をついた。
その様子に「ごめんね」とフランは軽く頭を下げて謝罪した。その時だった。
フランが持っていた黒魔術の本が一冊音を立てて床に再び散乱する。
「あっ!」
「どうした?」
「ごめん、本落としちゃった」
一番上に置いていた本が落ちた。表紙が比較的落ち着いているという理由で頂上に置いていた本そのタイトルは先ほど口にした恐ろしいものであった。
「悪魔の腸?」
「そう、それ。大丈夫、自分で拾う」
リュクレーヌが体をかがめる前にフランが本を拾おうとした。床に落ちた「悪魔の腸」は本文を晒す様に開ききっていた。
本文を目にしたフランが思わず「え?」と声を漏らし、暫く硬直していた。
「おい、どうした?」
フランの様子を心配して、リュクレーヌが声をかける。
「まって、どうして、ここが……」
フランは目を見開き、頭を抱えて、混乱するように途切れ途切れの言葉を紡ぐ。
「何だ?ここ?」
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