11.ビーバームーン

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◆   帰りの道のりの方が厳しいものだった。 道を進めるほど、マスカの数が増えていく。ロンドンに近づいている証拠だ。 行きと同じように宿をとることにした。帰りの宿もそれなりに混雑していた。 二人は今更気づいた。宿が込んでいるのはマスカへの襲撃の避難所とされているからだった。 それでも、その日は空室もありツインの部屋をとる事が出来た。 豪華客船の時ほどの豪華なホテルでは無いが、ベッドとシャワーは最低限ある。 一泊だけ羽を休めるのはちょうどいい宿だった。 「よかった、行きみたいに満室とかじゃなくて」 「あぁ、ツインだけどダブルよりはましだな」 二人は、それぞれベッドに座り談笑していた。 「ごめんね、僕が毛布もらったから風邪ひいちゃって……」 「いいよ。あれは俺が掛けたものだ」 気にするなとリュクレーヌは手を振る。 ふいに、フランが布団に転がっていた鞄に目をやった。 鞄の留め具が開いて、証拠品として回収した日記と本が出たがっているようにはみ出していた。 「ねぇ、証拠品、少し読んでみる?」
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