11.ビーバームーン

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ブラーチに電話をすると、ちょうど時間があったらしく、すぐにでも向かうと返事をくれた。 有難い事だ。三十分くらい待つと、彼は白衣を纏い、事務所の敷居をくぐる。 リュクレーヌはブラーチを歓迎し、早速『悪魔の腸』をはじめとした魔術関係の学術書を手渡す。 ドスンと、重力がブラーチの腕にかかる。 「これが本。主に分からないところは魔術のところだな。ちゃんと分からないところをメモしてあるから、解析してくれ」 「あぁ、分かった。それにしてもルーナエはやけに珍しい本を持っていたんだな」 「あいつ、マニアックだから」 リュクレーヌが笑いながら言う。 ブラーチは手渡された証拠品の学術書を、一旦ローテーブルに置いて、一冊を手に取りパラパラとめくる。 十ページに一度か二度くらい、紙を千切って作られた小さなメモが挟まっている。 「ここ分からない」「どういう事?」「???」など抽象的ではあるが、どの部分が分からないのかは理解できるメモだった。 ブラーチは本を閉じ、ローテーブルの上の山に返した。 「少し時間はかかるがいいか?」 「どれくらい?」 「この量なら一週間くらいだな。念のため、信憑性があるものか、理論的に確認したい」 例え、学術書であっても、正しい情報であるかは検証したい。正に、石橋を叩いて渡るといったようにブラーチの検証は徹底的なものだ。 「なるほど。分かったよ。よろしくな」 となれば、こちらも安心して彼に本を預けることが出来る。 ブラーチは持っていた診察鞄の中に受け取った本を押し込んで、病院へと帰っていった。
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