11.ビーバームーン

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七月二十日 分からなければ調べればいいんだ。 黒魔術大全には載っていなかった情報も新しい本を買って、 今日買ったのは『悪魔の腸』という本だ。これにファントムの好きな食べ物載っているかな?   七月二十四日 悪魔の主食が人間の魂だなんて。 どうしよう、僕の魂も食べられてしまうのか? 怖いけど、ファントム本人に訊いてみた。 「そんな訳ないじゃん!僕が親友のキミを食べるわけないだろ?」 と笑いながら答えてくれた。 良かった。 でも、ちょっと怖かったから 「でも、主食は人間の魂なんでしょ?」と聞くと 「僕が好きなのは悪い人間の魂だから、ルーナエみたいないい子の魂は食べないよ」と答えた。 つまり。 ファントムは悪い奴の魂を食べるヒーローらしい。   七月三十一日 兄さんが 「最近部屋に籠ってばかりだけど大丈夫か?」 と心配してきた。 「別に大丈夫だよ。友達が出来たんだ。いつも一緒に遊んでいる」と言ったら 「それはよかったな!」と喜んでくれた。   十月十九日 マスカの開発は随分進んだ。 物理的なシステムは僕が、魔術のコードを組み立てるのはファントムが、役割分担をしていた。 僕には魔術の文章は読めない。 読めるようになりたいけど、魔術師の資格が必要みたい。 魔術師ってどうやったらなれるの?とファントムに訊くと、 「ボクと契約して躰をくれればなれるよ」 と。 それはちょっと難しいなぁ。 僕は兄さんになりたいから。   十二月十一日 マスカ用の仮面が完成した。 後はこれを使うだけ。 計画の実行はクリスマス。 僕らの誕生日にしよう。   十二月二十四日 明日は遂に、計画を実行する日だ。 兄さんを殺してしまうのは心が痛む。 本当に申し訳ない。 だから、出来るだけ楽に逝けるように毒薬をディナーに盛ることにした。 絶対に失敗するわけにはいかない。 僕が兄さんになるためには。  
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