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リュクレーヌのものともフランのものとも違う三人目の声がした。
二人は思わずその三人目の声を探す。
事務所のドアが開いていた。
二人の視線の先にはリュクレーヌとよく似た顔を持った男が立っていた。
「お前……」
「久しぶり、兄さん」
男はニコリと微笑む。
──ファントムが姿を現した。
直感的に理解したフランは、スチームパンク銃を構えた。
「リュクレーヌ!下がって!」
威嚇するように銃口を向ける。
それでもファントムは動じない。
それどころか、両手を上げて、降参するようなポーズをとった。
「フラン、心配しないで。僕はファントムじゃない。ルーナエだ」
銃を向け緊迫した表情をしたフランに言う。
信じられるか、証拠はあるのかと
リュクレーヌはフランの背後から問うことにした。
「その、証拠は」
「残念ながら無い」
ファントムはため息をつきながら首を振る。
それならばこの威嚇の手を緩めるわけにはいかない。
だが、引っかかる点もある。
目の前に居るこの男が本当にファントムだとすれば、部屋に入って自分たちが気づかない間に攻撃を仕掛ける事だって可能だったはずだ。
それでも、彼は何も危害を加えなかった。
かと言って、彼がファントムでないという証拠はない。
フランは、銃口はそのまま、顔をリュクレーヌの方に向けて二人は見つめ合う。
「……どうする?」
「俺に考えがある」
そう言って、リュクレーヌは電話を掛けた。
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