12.コールドムーン

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だが、リュクレーヌにはルーナエの言わんとしている事が分かっていた。理由を訊かれる前に答えた。 もう二度と、自分の人生を捨てて、誰かになりたいなどと言う人間の望みが叶わないように。 自分の人生を最後まで歩める世界になるように。それがリュクレーヌの願いだった。 「……分かった」 ルーナエはこくりと頷く。 納得してもらえたようでリュクレーヌは安心し、柔らかく微笑んだ。 しかし、上がった口角はみるみるうちに下がり、憂を帯びた表情へと変わっていく。 「俺も、悪かったよ」 罪悪感。懺悔の言葉をリュクレーヌは口にした。 ルーナエは随分と驚いた。 「お前の気持ちをもっと考えられたら──」 「それは違う!」 ルーナエがリュクレーヌの言葉を遮るように叫んだ。 「人の気持ちなんて、目に見える物じゃない!絶対に分かるはずないんだ!だからこそ伝えなきゃいけなかったんだ!」 他人の心は見えない。絶対に分からないものだからこそ、悪魔に付け込まれるまで抱え込んではいけなかった。 気づいてもらう事を待つ前に伝えていればよかった。たった一人の兄弟なのだから。 「あの時は、兄さんが羨ましくて、妬ましいと思っていた。けど違った。分かったんだよ、僕は、兄さんに憧れていた!」 「ルーナエ……」
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