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「自分の気持ちにすら、気づかなくて……兄さんを傷つけた。ごめんなさい。本当にごめんなさい」
「分かった。もういいよ。それが分かっただけでいい」
泣きじゃくるルーナエをあやす様に、リュクレーヌは頭を撫でる。
あれだけの事件を起こされたのだ。
憎まれていると思っていた。
だが、それは結局憧れであった。
その気持ちにルーナエ自身がもっと早く気づけたなら、こんな事件は起きなかったかもしれない。
それでも、今はただ、ルーナエの本心が聞けた。
それだけでリュクレーヌには十分だった。
「俺も、お前みたいになりたいって思ったから。大嫌いな勉強も、頑張れたんだよ」
「えっ?」
ルーナエが顔を上げた途端、リュクレーヌは崖の方へと駆け出す。
「じゃあな!絶対にフラン見つけて、ここにファントム連れてきてやるからな!」
潔い啖呵を切って、リュクレーヌは崖の下へと落ちて行った。
迷宮を後にして、現実世界へと帰っていった。
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