12.コールドムーン

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◆   眩い光に包まれて、次に瞼を開いた時にはリュクレーヌにとって見慣れた事務所にいた。 机の上には自分を包んでいた光と同じ色をしたスチームパンク銃がある。 目の前の二人──クレアとブラーチは珍獣でも見つけたかのように大層目を丸くしていた。 「ああああっ!?」 「えっ!?どういう事!?」 そして、絶叫し、いきさつを訊く。 「えーと……ただいま?」 何が起きているのかさっぱり分からないリュクレーヌは適当に返事をした。 「ただいまじゃない!何処から帰ってきた!?」 「ここから」 リュクレーヌは机上の銃を指さした。 マスカレイドラビリンスに居た。 という事は、自分はこの銃へと消えて行き、先ほどこの銃から出てきたのだろう。 「……?」 ところが、いきなりそんな事を言ってもブラーチもクレアもちんぷんかんぷんであった。 仕方がない、さきほどまであった事を説明するかとリュクレーヌは口を開く。 「順を追って説明する」 スチームパンク銃の中に迷宮があり、ルーナエと会った事、そこで言われた事、今自分たちが最優先でやらなければならない事を全て話した。   「そういう事だったのね……」 「私は、なんてことを……」 全てを話し終わった後、クレアは暫く考え込むようにしながら一つ一つの情報を頭の中で整理して頷く。 一方、ブラーチは、うめき声を上げながら頭を抱えていた。 自分の行動が裏目に出た上に、ファントムに上手いこと利用されていた。 とんだ失態だったとブラーチは、今度は顔を覆う。
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