12.コールドムーン

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だが、リュクレーヌはブラーチの肩をぽんぽん、二回叩いて顔を上げる用に促した。 「ブラーチのせいじゃねえよ。気にすんな」 「……すまない」 ブラーチは泣きそうになりながら再び顔を伏せた。 ここまで落ち込む姿を見るのは初めてかもしれない。 だが、落ち込んではいられない。クレアは「要するに」と話の要点を切り出した。 「今一番やらなければならない事は……フランを見つけなきゃいけないって事ね」 「そうだ」 「ファントムの行先に心当たりは?」 「全くない!」 きっぱりとリュクレーヌは言い切った。 そのすがすがしさにブラーチとクレアは思わず漫画のように足を曲げ、よろけてしまう。 「駄目じゃない!」 すぐさま立ち上がり、クレアがつっこむ。 探さなければならない人物の行先の見当すらつかない。 第一関門が突破できるか危うい状況だ。 それでもリュクレーヌは人差し指を立ててニヤリと笑った。 「でも、手掛かりはある」 そう言いながら、懐から機械仕掛けの何かを取り出した。 二人はそれをまじまじと眺める。どうやらスピーカーのようだった。 そんなものが手掛かり?クレアは質した。 「何それ?」 「盗聴器だよ。フランの帽子に付けておいた」 フランの帽子には琥珀色のブローチがついていた。 それは、リュクレーヌが盗聴器を改造して作ったものだった。 「なるほど。周りの音を聴いてって事か……」 だとすればフランの身の回りの音を聴くことが出来る。 フランを攫ったファントムがうっかり口を滑らせてくれればこれ程にもツイていることは無いだろう。 とにかく、これしか今は手掛かりをつかむ方法は無い。 「そういう事!さっそく聴いてみるぞ」 リュクレーヌは装置の真ん中にある赤いボタンを押した。
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