12.コールドムーン

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「フランを解放するなら……仕方ない」 一歩、また一歩ファントムに近づく。ファントムは銃に腕を伸ばし。受け取る。 「素直だね。いい子だ」 取引は成功。──と思っていた。 「だが、馬鹿だ」 ファントムはそう言うと、今度は受け取った銃をフランに突き付けた。 「汚いぞ!フランを解放する約束じゃ」 「解放するなんて言ってないだろう?僕はねこの子を生かしてはおけない」 ファントムにとって銃の所有者であるフランは脅威だ。こうなったらとっとと始末してしまった方が良い。そう判断したのだ。 「……最期に」 「ん?何だ?」 フランの声にファントムが反応する。 「ファントム、どうせ僕は死ぬんだよね?それなら最期に一言だけ喋らせてよ」 「ほう……いいよ!どうせ死ぬんだ。一言くらい冥土の土産にどうぞ」 銃を突き付けて抵抗できないままの状態でフランに猶予を与える。 フランは「ありがとう……」と言った後、 すっと息を吸い、ファントムの方へ虚ろな笑顔を向けてこう言った。 「君にその銃の所有権を渡すよ、ファントム」 最期の言葉を言った直後、ファントムが持っていた銃が光り出す。 閃光は部屋中を包み込む。目が、開けられないほどに眩しい。
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