12.コールドムーン

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月明かりが差す真夜中。 ルーナエの一室で、スチームパンク銃は煌々と燃えていた。 赤々とした炎は銃だけを焼き、それ以外の室内のものには一切燃え移らない。 やがて、炎はみるみるうちに小さくなり、最後にはあっけなく消えて、そこには炭も灰も残らなかった。 「燃え尽きた……な」 スチームパンク銃はマスカレイドラビリンスそのもの。 ファントムの魂を焼き尽くすという目的を完遂し、役目を終えて炎と共に消え去った。 「全部、終わったんだね」 「あぁ」 マスカレイドラビリンスはマスカを生み出した者達を、全てを焼き去った。ファントムの魂、そして── 「ルーナエさんの魂も……」 「……」 リュクレーヌは俯き黙り込んだ。救いたかった。ルーナエの魂の為に戦ってきたはずだった。 それが、最後にはファントムの魂と共にあっけなく燃え尽きたなんて。 暫く無言の時が続く。悲しい現実に向き合うまでは時間がかかるものだ。
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