12.コールドムーン

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「え?」 「そんなの絶対に許さないよ。リュクレーヌが望んでも、それだけは許さない!」 「いてててっ!やめろ!死ぬっ!死ぬ!」 ギリギリと首に食い込む力が強くなっていき、リュクレーヌは悶えながらフランの腕を叩いた。 「どうせ僕が居なくなったらまたお菓子生活のショートスリーパーするんでしょ?そんなのだったらね、いくら不死身とは言え、生活習慣病で苦しんじゃうよ!」 「分かった!分かったから!!ごめん!ごめんって!」 ようやく分かってもらえたか、とフランは腕を首から放した。 自分がいかに残酷な事を言ってしまったかリュクレーヌは身をもって知ってしまった。 「辛い事言って、ごめんな……」 「……こっちこそ、首絞めてごめん」 ファントムに煽られた時には「別にそういうのじゃない」なんて言ったが、やはりフランにとってリュクレーヌは切っても切れない存在だった。 明日からは赤の他人です、貴方は自分と出会う前の生活をしてください、なんて言われて納得が出来るはずが無かった。 腹を立てていたら、なんだか疲れてきた。そんなフランの様子を察して、リュクレーヌは「もう少し、寝とけ」と促した。 「うん……」 フランは再び瞳を閉じて、眠りに就いた。 「……ありがとう」 フランが眠ったのを確認して、最後に礼だけは言っておかなければとリュクレーヌは小さく囁く。 目が覚めた頃にはきっと自分の事もマスカの事も、この一年間の事全てを忘れて一年前と同じ生活をするんだ。 フランの耳に届いたかどうかは分からないが、礼を言えた。リュクレーヌはそれだけでいいと思えた。
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