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特徴はリュクレーヌそのもののものだった。
──フランに親戚が?
家族を全員殺されて親戚など居るはずが無いが、自分と離れた後に家族が出来た可能性はある。
日本からであるのがとても不思議ではあるが、リュクレーヌは手紙を受け取った。
その日、宿にて、早速もらった手紙を読むことにした。
一体何が書かれているのだろうか。リュクレーヌは手紙を開くと宛先が自分である事にまず驚いた。
親愛なるリュクレーヌへ
ここに来たって事はあの本を読んでくれたんだね。
ありがとう。
僕はもうこの世にはいないけど、どうしても伝えたいことがあるんだ。
ハロウィンのブルームーンの夜に、渋谷に来て。
P.S.ちゃんとご飯食べている?またクッキーばかり食べていたらだめだよ!
優秀な助手フランより
手紙はフラン本人からだった。
リュクレーヌは目から何かが伝うのを感じ、顔を覆う。
「フラン……」
──やっぱり、一緒に居なくてよかった。
彼の死に目を看取っていたならどれほどに悲しかっただろう。
だが、本当に悲しいのはフランだ。
記憶があるまま、突然リュクレーヌが消えたのだ。
だからせめて、心の中のリュクレーヌを小説の中で生かそうと思ったのだ。
リュクレーヌという探偵の心を、永遠に存在させるために。
フランの事を思うとどれほど自分が不義理な事をしてしまったのだろうとリュクレーヌは深く、深く悲しんだ。
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