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こんな偶然があってもいいのか?リュクレーヌが暫く硬直していると、少年はきょとんと見つめる。
「……え?どうしましたか?」
「あっ……いや、なんでもない」
はっとして取り繕う。
そうだ、フランは死んだのだ。
いるはずがない。
今目の前に居るのはフランによく似た日本の高校生だ。
すると、少年はにこりと笑顔を見せた。
笑った顔もフランによく似ている。
「お兄さん、それ、コスプレですか?とっても似合っていますね!」
「あぁ、どうも」
そう言えば、今夜はハロウィンだ。
少年に自分の青いインバネスコートを指摘されて改めて思い出す。
もし、フランがどこかに居るのであれば、ハロウィンをわざわざ選んだのは彼なりの気遣いなのかもしれない。
リュクレーヌが、探偵リュクレーヌの恰好をして現れやすいようにと。
少年はリュクレーヌの服装を褒めると鞄から本らしきものを取り出した。
あの本だ。
フランが執筆した『マスカレイド・ラビリンス』
「この本の、探偵ですよね!僕、大好きなんですよー!」
「随分と古い本を知っているんだな」
『マスカレイドラビリンス』はフランの生前に執筆されたもの。もう、50年くらい前の本である。
少年の年齢から珍しいものだとリュクレーヌは感心した。
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