プロローグ ~スーパームーン~

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「一つは、君を助けに来た」 「助けに?」 「あぁ。あの仮面をつけた者は一ヶ月経つと自我を失った化物になり、ファントムの意のままに人を殺す」 仮面を売った張本人だ。契約を交わした人間がどうなるかを簡潔に説明する。 つまり、父は契約を交わして一ヶ月経ったから、化け物となり兄たちを殺めてしまった。 父自身の意思ではなく、悪魔の意思で。 「君たち家族が危ない。そう思ったからここに来たが……一足遅かったようだ。ごめんな」 男は申し訳なさそうに少年の頭をくしゃりと撫でる。 少年は助かった。しかし兄たち二人は殺されてしまった。 もしこの男が来るのがもう一歩遅ければ、自分も兄たちと同じように殺されたかもしれない。 ──そのほうが良かったのではないか? 複雑な心の内を吐き出せないまま少年は沈黙した。
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