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院長室を出て、階段を下り、永遠に続きそうな長い廊下へと出た。
暫く、まっすぐと歩く。
一番奥の一人部屋へ差し掛かる辺りで、スコッチは足を止めた。
「こちらです」
部屋のドアにはネームプレートがあった。
この部屋の患者、つまり、マスカかもしれない患者の名前が記されている。
「マリー・ロードデン……女性かな?」
「みたいだな」
フランの考察にリュクレーヌも同調した。
三人は病室へと足を踏み入れる。
室内には、ベッドに横たわる患者と、彼女の世話をしていた看護師らしき女性が居た。
「あら、院長」
看護師は、スコッチを見るなり、声をかけた。
すると、すぐに患者の方に微笑んだ。
「マリーちゃん。院長先生が来たわよ」
「先生!」
マリーと呼ばれた患者はベッドから元気よく起き上がる。
スコッチが来て相当嬉しいのだろうか。子供のようにはしゃいでいた。
いや、子供のようにと言うよりは──
「子供……?」
リュクレーヌは声を漏らす。
マスカの疑いがあるマリーの正体は、小さな女の子だった。
確かに、害虫駆除の一件のように子供がマスカになる事もあり得ない話ではない。
「やぁ、元気にしていたかい?」
「うん!マリー、とっても元気だよ!」
だが、満面の笑みで純粋に答える少女が、マスカだと、にわかに信じられなかった。
リュクレーヌが顎に手を当て、悩まし気に思考を巡らせていると、看護師から、じとっとした視線を感じた。
一体彼らは何者なのだろう?と言う意味を含んだ疑いの眼差しは、次に言葉へと変換される。
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