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ようやく言葉を口にする。掠れるような小さな声で。
「まるで、俺への恨みや妬みで呪いが行われてた場所みたいで、嫌な気分なんだ。早く出たい」
理由は明白だった。ここはルーナエがファントムとマスカを作った現場だ。
そして、その動機となったのは兄、ルーメンになりたいと願ったからである。
兄を殺し、自分が兄に成り代わる、悪魔との秘密の作戦が建てられた場所だ。
いわば、この場所でルーメンへの殺人計画が練られていた。部屋の雰囲気からも、まるでこの部屋自体がルーメンを──リュクレーヌを呪う、迷宮のような気さえしたのだ。
「リュクレーヌ……」
落ち込むリュクレーヌにフランは何とかしなければと声をかける。
「大丈夫だよ。ルーナエさんは、リュクレーヌの事恨んだりしていない。だって、心配してくれていたんだもん」
「心配?」
リュクレーヌが聞き返す。ルーナエが兄を心配していた。どうしてそのような情報をフランが知っているのだと。
「うん、この間ルーナエさんに会った時、リュクレーヌのこと──」
「ちょっと待て、この間だと!?それ、いつ会った!あいつに」
リュクレーヌはフランの両肩を掴んだ。コンセルタ家襲撃の後も、最近、フランはルーナエに会ったというのか。そんな事は初耳だとリュクレーヌは叫んだ。
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