11.ビーバームーン

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そのため、日記を読むペースはかなり遅いものだった。 一晩あれば余裕で読める量であったが、数日に分けてゆっくり読んだ。 これはリュクレーヌの為でもあり、ブラーチの調査にも時間がかかるという事で急ぐことでは無いと判断したためだ。 それでも何とか一冊目の日記を読み切り、リュクレーヌはひとつため息をつく。 「……正直、思っていたものとは違うけど、キツいな」 「違う?」 「俺が、ちゃんとルーナエのこと見てやっていたら、こんな事にはならなかったのかもしれない」 ルーナエに出来た友達は悪魔だった。 それを「友達が出来たんだ」と弟が言ったあの夏の日に気づけていたなら。 そんな事つゆしらず、少年であったルーメンは「よかったな!」と祝福する事しか出来なかった。 あの時、もっと不振に思ったり、ルーナエの部屋を調べていたならば結果は違っていたかもしれない。 「ファントムの言う通り、ルーナエがマスカなんて作ってしまったのは俺のせいだよ。止められたのは俺だけって意味でな」 「リュクレーヌ……」 俯いたリュクレーヌをフランは心配した。 この調子では二冊目の日記など読むことが出来ないのではないかと。 けれども、この心配は杞憂に終わった。 リュクレーヌは顔を上げて、二冊目の日記を手に取る。 「だからこそ、今の俺達が出来る事がこの二冊目に書いているかもしれない。フランのスチームパンク銃と同じで、ルーナエの託した心がここにあるかもしれないんだ。俺もそれを託されてるんだ」 ファントムに乗っ取られてでも残した日記にはきっと、ルーナエの託したかった思いがあるはずだ。 それに、両親の死についても記述があるかもしれない。 リュクレーヌは二冊目の、本来自分が使うはずだった日記帳の表紙を開いた。  
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