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「……本当に兄さんにはすまない事をしたと思っている。心から、ごめんなさい」
これだけは最後にけじめとして伝えなければならない。ルーナエは深々と頭を下げた。
リュクレーヌは背を向けたまま大きなため息を吐く。
「本っ当に……手のかかる弟だな」
そう言って、頭をガシガシと掻いた後、振り返って、もう一度ルーナエの方を向いた。
「なぁ。最後に一つだけ頼み事をしていいか」
「うん。僕にできる事なら……それが、償いになるのなら」
真剣な表情でルーナエは言った。
自分は兄に対して取り返しのつかない事をしてしまった。
その償いができるのであれば何でも聞くつもりであった。
「ファントムと俺を含めたすべてのマスカに関する記憶を全世界から消して欲しい。」
「え?」
「ファントムが魔術のルーツなのは契約者であるお前もだろう?だとしたらあの記憶操作はお前も使えるはずだ」
「うん、できるよ……その人の心……魂を書き換えてしまえばいい……けど!」
ファントムの記憶操作。リュクレーヌが何の為にそんな事を依頼したのかはルーナエに分からなかった。
「理由は、もう二度と、こんな哀しい兵器を作るやつが居ないように……だ」
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