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もう、リュクレーヌが救いたかったルーナエはいない。この事実だけが冬の夜の空気のように刺さる。
「大切な誰かを失うのは、辛いものだな。俺は今後永遠にこの苦しみを味わうんだ」
「……不死身、だからね」
リュクレーヌは不死身だ。これからもずっと。今後、たとえ大切な人物がどんなにできてもいずれ死と言う別れが訪れる。
これ以上、大切な誰かをリュクレーヌは死によって失いたくなかった。もう二度とこんな悲しみは味わいたくなかった。
「だから、フラン。今日でお別れだ」
「えっ……」
フランは思わず顔を上げる。表情こそ見えないが、リュクレーヌの声は震えていた。
それでもリュクレーヌは、淡々とこれからの事を話そうとしていた。
「これ以上、お前とは一緒に居られない。お前は明日になったら普通の人間として、生きてい……くっ!?」
突如首元に激痛が襲い、思わず声を裏返す。それもそのはず、フランは背後からリュクレーヌの首をぎりぎりと締めていた。
「……何それ」
フランがいつもよりもワントーン低い声で囁く。
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