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穏花は急いで制服を着ると、茶色のダッフルコートを羽織り、温かなマフラーと手袋をして家を飛び出した。
「美汪っ、美汪っ……早く、早く会いたいっ……!!」
嬉しさのあまり心の声が思わず口に出る。
この一週間、美汪に会えない時間は穏花にとってとてつもなく長く感じた。
スマートフォンの通話アプリのメッセージでやり取りはしていたが、やはり面と向かって話すのとはまったく違う。
穏花は美汪の顔をずっと思い浮かべながら、またあの目で見つめられ、あの声をかけられる時を待ち詫びていたのだ。
そして叶うなら、もう一度——いや、何度も何度も、数えるのが億劫になるほど、触れてほしいと思っていた。
美汪に会ったらまずなんて言おう? 驚かせてみようかな? などと、少し悪戯っ子のような気持ちで、穏花は教室のドアを開けた。
「おはよう、穏花、今日早いわね」
「おはよー、みっちゃん!」
最初に目に入ったのはみちるだった。
みちるは優等生で、いつも朝が早い。
他の生徒たちはまだ少なく、張り切って早く登校しすぎたかな、と穏花は自分にあきれ笑いをした。
「どうしたの? なんだかやけにテンションが高いわね。何かいいことでもあった?」
「え? あ……うん、ちょっとね!? えへへ」
穏花は、みちるにもたくさん心配をかけたから後で報告しないと、と思いながらだらしなく笑っていた。
もうすぐ美汪に会えると思うと、どうしようもなく顔の筋肉が緩んだのだ。
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