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自分の席に着いた穏花は、そわそわと肩を揺らしながら教室の白いドアに目を配っていた。
そんな彼女の様子を見たみちるが、不思議そうに声をかける。
「どうしたの? ずいぶん落ち着かないみたいだけど……圭太を待ってるの?」
「え? 違うよ、圭太じゃなくて……美汪を待ってるの」
そう素直に答えた穏花に、みちるは涼しげな顔を顰めて、少し苦笑いをした。
「……みよ? って?」
「違うよ、みよ、じゃなくて、みお……黒川君のことだよ。どうしたの、みっちゃん? 今更……」
その返事に、みちるはますます意味がわからないといった風に笑って見せた。
「やだ、穏花ったら、まだ夢でも見てるの? うちのクラスに黒川君なんて、いないでしょ」
今度は穏花が目を丸くした。
「え……や、やだなあ、みっちゃん、なんの冗談」
「はよー、みちる、穏花!」
二人の会話に入って来たのは、今登校したばかりの圭太だった。
彼はもう紫の目や尖った牙はしておらず、元の活発な学生の圭太に戻っていた。
「よ、よかったね、圭太、元に……あ、元気になったみたいで」
「うん? 俺はいつでも元気だろ? 穏花は一週間以上も休んでたじゃん! 大丈夫かよ?」
圭太の答えは穏花にとって違和感のあるものだった。
まるで、自身が吸血族の姿に変化したことを綺麗さっぱり忘れているようだったからだ。
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