終章

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 ラザレスは静かに、しかしはっきりとそう言った。クリスはすぐに首を振った。 「いけません……それだけは、いくらあなたの頼みでも」 「俺が知る魔導士の中で、最も信頼できて、呪詛の実績もある。だからこそ、お前に頼みたい」 「待って。お願いですから、もっとゆっくり、きちんと考えてください。あなたは今、ロルーと引き離されたばかりで気が動転しているんです」 「そうじゃない。それだけではないんだ。俺はそもそも、彼女と共に生きていけるとは思っていなかった。今も、サングランになって彼女と共にあろうとしているわけじゃない。しかし、俺は彼女と同じ呪いを受け、彼女と同じ時間を生きるべきだと思っている」 「ラザレス」 「……守護魔導士はサングランでは務まらない。後継者は結局生まれなかった。俺はどうしてもサングランにはなれなかった。今になってようやくその義務がなくなったので自分でやろうにも、もう俺にはそこまでの魔力が残っていない」 「ラザレス!」  クリスは本当に珍しく、心の底から怒りを覚えているという顔をしていた。涙で震える声で、ラザレスに訴えかける。 「私はそんなことをするために、今、あなたの前に姿を現したのではないんです」 「……すまない。お前が悲しむことはわかっていて、言っている」 「いいえ、全然わかっていません。あなたは、私やジルド、ロルーを見て、サングランという存在を知った気になっているだけです。我々のように意識を保って永らえることができるのは、ほんの一握りです。ロルーのように、自分の性質を制御できないサングランでさえ、多くの犠牲者を見てきた私からすれば、恵まれている方です。ほとんどは、あの施療院で出会ったサングランのように、怪物になって死を待つだけの存在になる」 「それでもいい」 「それでもいい? 私に、それをせよと?」  ラザレスは押し黙った。クリスはさらに畳みかける。
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