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外は雨が降りしきる中、静かな森の家の中、クリスと別れてからの話をして過ごした。ジルドは無事だがレイが死んだことを聞くと、クリスは痛みをこらえるようにしてうつむいた。もっと他にできることはなかったのかと、自分を責めているときの顔だった。
レイとは出会った時から敵同士ではあったが、同情に値しないほど堕ちた男ではなかった。出会い方が違えば、友になれたかもしれないと思う。
「ラザレスは、その後どうしているんですか?」
「陛下へご報告に、一度王宮へ帰った」
「帰られたのですか?」
クリスが驚くのも無理のない話で、一刻の猶予もない状況であったとはいえ、ラザレスとクリスは国王に何の断りもなく破壊魔法を消滅させてしまったのだ。
破壊魔法がなくなった今、大量の祭司たちが仕事を失っている。それはロイアレス全体の問題であり、本来であればラザレスとクリスが独断で行なって良いことではなかった。
そしてさらには、ラザレスは破壊魔法の封印のためだけに生かされている王子だ。この状況で国に帰っては、どんな目に遭わされるかわからない。
「危険は承知の上だった。カイトにも散々反対された。それでも、やったことの責任は果たすべきだ。誰からの口伝えではなく、俺から話すべきことだと思った」
「はあ……なんという無茶を」
「お前に言われたくない。無事だったんだからいいじゃないか」
「それはようございましたが。それで、陛下はなんと?」
「目障りだから失せろと言われたので、王宮を出てきた」
クリスはうつむいていたが、ラザレスはこれを、ロイアレス国王のできうる限りの慈悲だったと考えている。
「俺を始末することもできたはずだ。いや、始末した方が良かったはずだと言った方がいい。俺の意志に関わらず、王家の血を引く者が生きながらえれば、どんな禍根を残すかわからない。それを知らぬほど、陛下は愚かなお方ではない。それでも、陛下は俺に生きていて良いとおっしゃった。俺にはそれで十分だ」
「そう、ですか」
ラザレスはこれまで感じたことはなかったが、ロイアレス国王なりに、ラザレスに申し訳ないという思いがあったのかもしれない。それがあったとしても、愛した妻の裏切りによって生まれた子供なのだから、仲睦まじく暮らすこともできはしない。
その葛藤の末に出された結論が、王宮からの追放だったのかもしれない。ラザレスはそう考えていた。
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