サファイア強盗事件簿

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「皆さんお集まりいただきありがとうございます。ご存じの通り、昨晩この屋敷にあったサファイアが盗まれました。この中に犯人がいる。それを伝えるために集まってもらいました。私は探偵の銀崎です」  くっくっく……。これは完全犯罪だ。誰も俺、運転手の高橋が犯人だとは思わないだろう。  厳重な警備と思われているこの屋敷は、裏口から入った裏庭のガードが甘い。この俺にかかればこんなの簡単な強盗だったさ。バレるはずがない。 「バレるはずがない。そう犯人は思っているでしょう」  何……!?何か証拠を残してしまっていたのか。 「昨日屋敷の裏口には塗りたてのペンキが敷いてありました。しかしその存在に犯人は気付かなかったのでしょう」  そんな、ペンキがあったのか。夜暗くてその存在に気付かなかった……! 「ペンキがあったのか。そう犯人は思っているでしょう」  くそ、そこまで読まれていたとは。 「そして、裏庭を通った犯人は窓から屋敷内に侵入したのでしょう。裏庭にゲソ痕が残っていたとも知らずに」  なに、ゲソ痕があっただと。入念にゲソ痕が付かないルートを歩いたというのに。最近の科学ではどんな状態のゲソ痕でも鑑定して、犯人を見つけてしまうこともあるからな。 「皆さん、この屋敷に入る際、スリッパに履き替えてもらっておりますね」  まさか……! 「まさか。そう犯人は思っているでしょう。そのまさかです。私が先ほど皆さんの靴裏の形をセメントで採取させて頂きました」  非効率だ……!セメントで取る程のことではない。最新の科学ではそんなことしなくても靴裏の形は取れる!セメントでは時間もかかるし、皆の靴を汚しているだけだ! 「非効率だ。そう犯人は思っているでしょう。しかし、それくらいしっかりと鑑定をした方が正確な証拠が取れるのですよ」  そうなのか。確かにやりすぎなくらいが丁度良いのかもしれない。  しかし、俺はなんというミスをしてしまったんだ。もっと注意深く歩いていれば……! 「もっと注意深く歩いていれば。そう犯人は思っているでしょう」  なぜその人の心が読める能力を犯人確保に使わない!  さっきから俺の思っていることを全て言い当てているのに!  この探偵は心を読む能力を持っているのであれば、それを前面に押し出した捜査をすれば良い!なぜセメントを使うような面倒なことを……! 「……さあ、そろそろ犯人の正体を言おうではないか」  図星だったのか?急に言葉に詰まって、犯人を言う展開に持っていっている……。
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