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プロローグ
………………この書を手にした者どもに、務めとして、戒めを与えん。この書に寄りて、人を損なうことなかれと。なかんずく、決して、決して殺めることなかれ。この諌めを守れぬ者、この書を手にすること能わず。汝が目、この場で潰れよ。戒めを破りし者、汝らが身を砕きて贖わん…………
***
あたしたちが、もっと、ずっと小さかった頃の話をしよう。
ウサギの、ビトちゃんの話だ。
父さんと母さんが、あたしたち二人をおもちゃ屋に連れて行って、なんでも好きなものを買ってあげよう、でも、予算はいくらまでだよ、そう言ったことがあった。
あたしたちは喜んだ。
おもちゃ屋の中を駆け回って、あたしは直ぐに気に入ったものを見つけた。それが何だったか、今では覚えてさえいないのだけれど、そのときはそれがとても気に入った。それしかダメだと思った。けれど、それは高かった。それだけで予算がなくなってしまうくらい。
あたしは顔を赤くして、泣きわめき、これでなきゃダメだと言い張った。両親は難しい顔で黙り込んだ。駄々を捏ねる子供の言いなりになるなんて、間違ったことのような気がしたからだ。あの人たちにとっては、それ以上でも以下でもなかった。
そのとき、姉さんも泣き出した。
「花音ちゃんの言う通りにしてあげて」
姉さんはそう言い、「自分はこのコでいいから」とも言った。
それがウサギのビトちゃんだった。
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