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あの頃から、ほんとうはあたしにも解っていた。
姉さんは、父さんたちの理想の子どもだったんだ。姉さんみたいな子どもだけが、父さんたちは欲しかったんだ。かわいくて、素直で、何よりも、自分たちの邪魔をしない子どもだけが。
そのことが、姉さんには解っていた。その役割を演じることができた。
あたしにはできなかった。
やらなかった。
やってたまるか。クソども。
ああ。
ああ、姉さん。
あたしはいったい、何をしてしまったんだろう?
どうして、あんなことをしてしまったんだろう?
小夜はいやな奴だ。あたしは大嫌いだ。でも、殺してしまった。
どうして?
あたしは、いくらいやな奴でもでも殺したいなんて思わない。思うわけがない。
それなのに。あたしは姉さんに小夜を殺せって言った。
殺せって言った。殺せって言った。殺せって言った。殺せって言った。
殺せって。
あたしのせい?
違う! あたしは殺したくなんかなかった。
殺せって言ったけど、直ぐ取り消すつもりだった。でも、姉さんが。
姉さんがいやだなんて言うから。あたしに逆らえるはずないのに、言うから。あんなことを言わなかったら。
だから、姉さんが悪い。あたしは悪くない。
〝あたしは悪くないって、逃げ出すことしかできないくせに〟。
違う! 違う。違う。違う。あたしは悪くない。
あたしはほんとうに悪くない!
悪いのは姉さん。悪いのはあの二人。二人して、あたしをのけ者にしたから。
あたしをのけ者にした、あいつらが悪いんだ!
だから。
ああ。あたしはどうしたらいい。どうしたらいいの?
姉さん。助けて。
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