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暗い路地を、あたしは駆けていた。黒い板塀で左右を囲まれた路地は、人独りが通れるほどの幅しかなく、ぎくしゃくと折れ曲がって、まるで迷路だった。
そんな中を、あたしは逃げていた。
何から逃げているのかは、分からなかったけど、追いつかれたらお終いなことは分かっていた。
息が切れて、肺が焼けるようで、脚にはもう力が残っていなかった。
それなのに、角を曲がるとそいつがいた。金色の目をした、ウサギの化け物。
悲鳴を上げて、あたしは崩折れた。
もう走れない。もうお終いだった。あたしは頭を抱えて、泣いた。
そのとき、誰かが、あたしの目を開かせ、怪物がいると思ったところを指差して言った。
――狛犬。
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