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多分、あたしは眠ってしまっていたのだろう。気が付くと辺りは明るくなっていた。ハイサッシからは朝の日差しが、燦々とリビングに降り注ぐ。姉さんなら、楽しそうに一日を始められたはずの、すてきな朝。
姉さん?
あたしは周囲を見回した。姉さんはまだ帰っていないンだろうか。
敏也のとき、姉さんは人の姿で帰ってきた。ほとんど、人間の姿だった。恐ろしくて声もかけられなかったけど、普通に二本足で歩いていたし、一人で自分の部屋に戻っていった。
今度は違うんだろうか。今度は何が起こるんだろう。
考えてみれば、姉さんは、もうほとんど向こうの世界の住人になってしまっている。もしかしたら、小夜だけじゃなく、無関係な人間を手当たり次第に、襲ったりしているのかも知れない。
あたしは寒気を覚えた。
戒律を一度破っただけで、姉さんはあんなになった。それなのに、あたしはまた破ってしまった。姉さんはもう人間には戻れないだろう。ずっと怪物のままだろう。
きっと、ここにも戻ってくるって思うほうがおかしい。
そして姉さんの身体からは、坂の上の世界の住人たちが、無制限に溢れ出す。
それは間違いなく、破局を意味する。姉さんにとって、あたしにとって。
関係ないけど。どうでもいいけど、おそらく、あたしたち以外の世界、そして、そこに暮す、すべての生き物に対しても、それは破局をもたらすに違いない。
どうしたらいい。
どうしたら。
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