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俺は、明けの明星が煌めく冬空のもとを歩き、所の通用門の門衛の敬礼に返礼しつつ、白い息を吐く。
いつもの夜勤明けの朝であった。
だが、その冷えた空気には、ひと月前の厳寒期とは、はっきりと異なる、冷気の緩みが感じられる。
そういえば、頭上に広がる暁の空に、朝陽が昇る時刻もずいぶんと早くなった。
春が近い証拠であった。
冬が明ける。
それは、この街にまた祭りが訪れるということだ。
この街に暮らす人々に春の訪れを知らせる、“革命記念祭”が。
……ただ、俺ひとりが、憂鬱になる、あの祭りが、もうすぐ来るのだ。
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