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茶波 虎之介
私は太った茶トラの猫の後ろをトボトボと付いて行った。
尻尾が揺れるたびに薄い毛の生えた玉々ちゃんが右へ左へと忙しく移動してて可愛かった。
茶トラはたまに私の方を振り返りながら、ちゃんと付いて来ているか確認していた。
その内に辺りは次第に木々に覆われた細い獣道に分け入って行った。
「ねえ、ニャーちゃん。
どこまで行くの?」
私は不安になっていた。
「ニャーちゃん?
無礼な奴め...
吾輩は...
吾輩は...」
「ぷっ!」
私は思わず吹き出してしまった。
「無礼者!
この美しい波のような茶模様を持つ吾輩は先祖代々受け継いで来た名門猫家で中々お目にかかれニャイ貴重な家柄。
我ら茶波家一門のあかしぞ!」
「へえ~、そうなんだ。
じゃあチャナミさまとお呼びすれば良いのでしょうか?」
「何をトボけた事を...
虎之介...さまと呼んでよろしい。
しかしおミャイも茶波家の一員ぞ!」
「えっ!私も?」
私は慌ててお尻を触って尻尾がないのを確認して安心した。
「虎之介さま、一つお尋ねしても?」
「手短に。」
「はい、今どこに向かっているのでしょう?」
「ふん、面白くもないし教えたくはないが...
おミャイの嫁入り先に挨拶に行ってる。
ふん、悔しくて堪らんが...」
「わっ...私の嫁入り先?
どういう事でしょうか?
私は好きな人もいないしお嫁さんだなんて...
ありえませんよ!
私だって暇じゃないんです。
虎之介さま、もう帰りましょう!」
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