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家から自転車で20分の所にある市立図書館は規模も大きく蔵書も星の数ほど揃っていた。
私はこれまで学校でもそうだが図書館には殆ど縁がなかった。
だから雰囲気にのまれ暫く何をするでもなくただぼんやりと座っていた。
人の足音や書籍をめくる音、たまに咳払いが聞こえるくらいの静寂な世界は居心地が良かった。
私はふと我に返りバックの中から赤本と参考書と筆記用具を取り出した。
中学の頃からKの嫁になるべく知識と教養は必要不可欠と思い込み、それなりに勉強はして来たので成績は常にトップクラスにいた。
思い起こせば今まで私は常にKのための日々を送り、Kと共にある妄想の中に生きて来た。
机に並べた赤本の表紙には◯◯大学と近寄り難い太く大きな黒文字が横たわっている。
私は大きく息を吸い込み付箋を貼ったページをめくった。
不思議と集中出来た。
Kの裏切りが発表されて以来 これほど真剣に集中できた事はなかった。
気付くとあっと言う間に2時間が過ぎていた。
私は持って来たペットボトルの水をコソコソ飲み一息ついた。
すると周りの風景が歪んで見え始めた。
久しぶりに集中したせいかと思い手のひらで目を覆った。
しかし体の力が抜け意識が遠退き始めた。
これは以前 拒食症の時 何度か経験した事のある貧血だと思った。
机を両手で掴み必死に耐えようとしたが意識と共に辺りが段々と暗くなって行った。
その時、誰かが私の肩を掴んで私の名を呼んでいるのに気が付いた。
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