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子猫は道路へ出ていた。
トラックの運転手はそれに気付いたが首をすぼめるので精一杯だった。
ピチュは走り出した少女の足をゆっくりと払った。
すると少女は前のめりに倒れて しこたま地面に額をぶつけ泣き出した。
異変に気付いた母親が狂った様に大声を出しながら少女の元へ駆け寄ると抱きしめて出血した額を掌で覆った。
子猫が血と肉の塊になった瞬間 チリンと音を立て溢れた魂は行き場を失くしたシャボン玉のように漂っていた。
白服はその玉を両手で包みながら唇を丸く長く突き出して「ポコン」と音を立てながら吸い取るとスッと消えて行った。
「ねえ、ピチュ。
どう報告するつもり?
ここに幸せは無いように思うけど...
ただただ少女と母親が救われてトラウマだけが残るんじゃないかな?」
「うん、今はね...
あの少女は命の選択を数秒で迫られ そしてきっと無意識のまま決断した。
どういう事なのか分かるよね?
いつかあの娘が大天使様のお使い人なのが分かる日が来ると思う。
わたち達よりも遥かに遠い存在になるお方なんだよ。」
僕はピチュを見つめて大きく頷き微笑んだ。
おしまい
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