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川面の少女
このキャンプ場に来たのは久しぶりだ。
小学生の頃から家族とよく訪れた。
お気に入りは川岸にある大木の枝に括られて垂れ下がったロープだった。
僕と弟は交互にロープに飛びつき川面へダイブして楽しんだ。
僕達はいつも時を忘れて夢中で遊んだ。
気まぐれで甲高いひぐらしの鳴き声が辺りを包むと楽しい1日の終わりが近づいたようで物悲しく感じた。
日が傾き始め空腹感で体が満たされた頃、その大木の影から少女が僕達を見ているのに気付いたが見て見ぬ振りをして遊び続けた。
「飯だぞ!」
バーベキューを焼き始めた父の声が木漏れ日を揺らした。
僕と弟は顔を見合わせて走り出そうとした瞬間呼び止められた。
「おにいちゃん。
ウチもそのロープで飛び込みたいよ。」
「何だよお前、いつから隠れてたんだ。」
弟が無愛想に言った。
「わたち一回だけ飛び込んだら帰るし...
そのロープに手が届かないから...
手伝ってほちいの。」
「君はまだ小さいから危ないよ。
それに川だって深い所があるからね。」
僕は弟を制しながら穏やかに言った。
「わたち何度も飛び込んだし全然平気なの。
今日は手を貸してくれる人がいなくって...
それにずっとおにいちゃん達が遊んでたからイケないんじゃない!
だから手伝うのよ!」
「何だよ逆ギレ?!」
弟は身を乗り出した。
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