58人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
メリークリスマス
大学を卒業した後、
俺こと田中 歩(たなか あゆむ)は一般企業に就職したのだが……
「あー!!まじやってらんねぇ!!」
入社するなり先輩や直属の上司からΩ性に対する偏見とセクハラを受ける日々。
挙句、会社では発情期に特別有給休暇が認められてるはずなのに
『一応確認しとくけど、ただ休みたいだけとかじゃないよね?うちも人が足りてないってのにこんなに休まれちゃうと困るんだよ。まぁ…君に番が"できない"理由は何となくわかるけどさぁ』
ちらっと値踏みするかのような、あの目の色!!
『このパッとしない平凡なΩに番なんて無理かぁ』
そういう意味だよな!?
この発言にブチ切れた俺は、精神的にも耐えきれず半年とたたずに退職。
勿論、性差別を許すはずもなく、きっちり人事部に手紙を送りつけてやった。
だって、バース性関係なく誰もが働きやすい環境を提供します。とコンプライアンスに載せてるくせに、働いてる上司の中身がこれじゃ意味がないだろ。
すぐ会社からは謝罪の電話がきたし、あの上司は降格処分になったらしいので辞めたことに未練はない。
で、借りてるアパートからすぐの居酒屋で勤務することになったが、店長にはΩの親戚がいるらしく偏見もなければ神のような人柄だった。
まさに捨てる神あれば拾う神あり。
ーーーー、それから数年と数ヶ月。
俺は元気に居酒屋勤務。
そして、菊池雅之はというと…
とっくに夜間定時制の高校を卒業して、医療メーカーからのスカウトでそのまま営業部へ就職。
なんのコネもないし短大にも入っていないというのに、ビルで清掃のアルバイトをしていたところ人事部の課長やお偉いさん達に気に入られたのがきっかけらしい。
大学卒の俺でも大手企業なんて難しいってのに、さすがα様。
まさか学生時代よりもバース性の格差を思い知るとは
今さら嘆いても仕方ないんだろうけど、理不尽な世の中である。
最初のコメントを投稿しよう!