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「ただいまー…」
店の片付けを手伝い、帰ったのは深夜2時半。
静かに家の扉を開けると電気は消えていた。
(寝てる、よな…?)
すーっと寝室の扉をのぞくと、すやすやと眠っている彼がいた。
そう、俺達はいま……
俺の親からの反対を乗り越え、同棲をしていた。
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(はぁー、さっぱりした♪)
風呂にも入ったし、あとはビール一本くらい飲んで寝ようかな~。とリビングに戻ると電気がついていた。
まさか
「おかえり」
テレビの前に座っていたのは菊池。
うるさくしたつもりはないんだけど、この安い賃貸物件はそれなりに音が響くから困る。
1LDKの風呂トイレ別。
だって家賃は折半したいんだ。菊池はともかく、俺が払える金額で探すと…まぁこうなった。
「ただいま。ごめん、起こしちゃった?」
「いや。歩の匂いがしたから」
うっ、そんなに汗臭かっただろうか…?
そりゃ冬季限定のキャンペーンもあれば今は忘年会シーズン。さらに今日はクリスマスイブで始終バタバタしていたけど…。
「いいのかよ、起きて。明日も早いんだろ?」
俺は昼夜逆転生活。菊池はサラリーマン。
そんな生活スタイルのせいで朝に軽い挨拶や会話をしても、すれ違いの方が多い。
それに菊池は今や営業部のエースだ。
家で報告書を作ることもあれば、何日も上司と出張にも行く日もある。
それでも忘れずに俺の発情期だけは合わせてくれてるんだけど…
「いや、そうなんだけど…って歩、まだ髪の毛濡れてる」
「え、でもこれくらい普通じゃ…」
「いいから、こっち」
えー、いいのに…なんて文句を呟きながらも言われた通り彼の前に座る。
そして俺が首にかけていたタオルをとり、優しい力加減で水気をとってくれた。
「こんなスキンシップ、久しぶりだね」
「…うん。ごめん。年末年始くらいは休み取れるから…」
「今日もお店、忙しかった?」
「いや、もー本当に大変でさぁーー…」
菊池に悪いと思いつつも、ちょっとだけ愚痴と日常会話をする。
とても、平和で心穏やかな時間なんだけど…
「そういえば今日…って時間帯的に昨日か。クリスマスイブだったじゃん?」
「うん、そうだね?」
「そろそろ、菊池の返事が…欲しいんだけど」
「ーーーーうっ」
その反応からして、どうやら忘れていたわけではないらしい。
まぁ、俺は普通に繁忙期だし、クリスマスディナーもデートもなにもなかったわけだけど…!
【一週間前の朝】
「菊池…い、いえ!菊池雅之さん!!」
「なに、改まって?」
「俺と結婚っ、しませんか!?」
菊池に……逆プロポーズをしていた。
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