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「碧はゆっくりと起き上がると
鞄に付けられたストラップの中のジンを飲み干し
窓際の鉢植えに向かった
そして大麻の様に広がる葉を千切って口にすると
ベランダに続く窓を開いた
黒髪のボブが風に揺れる
夜景の中へ、部屋の外へ
一つ、歩み出る
『これが私の…』
それから先は風に消えた
夜景に解けてしまいそうな
黒い服と黒い髪
その後ろ姿が半分だけ振り返り
星のような碧い瞳が光るのが見えた
そして
ベランダの向こうに碧は消えた
手を伸ばすのもおこがましく
ただ見守るしかなかった
碧が夜に溶けてしまって
鈍く何かがひしゃげるような音がして
どれだけの間、呆けていたのか
自分でもまるでわからない
わからないけれど
やがてベランダから顔を突き出して
下を覗き込むと
碧の血は抽象的な構図のように広がり
その中心で碧は煌いていた…」
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