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初対面の時
彼の家に行ったら、見慣れない女物のピアスがあった。
「…どうしたの、これ?」
「お前のでしょ?」
いやいや、私耳開けてないし。
「…あ、やっぱ姉貴のかも」
嘘つけ。兄弟は弟さんだけって言ってたじゃない。問い詰めたら白状した。どうやら私はセカンドだったらしい。
そのままサヨナラした。
告白されて舞い上がってたのか、いろいろ見えてなかったようだ。いや、見ようとしなかったのか。
怪しいと感じたことは多々あった。
その度に気のせいって自分に言い聞かせて、何でもないふりを続けてきた。
「…いらっしゃいませー…あれ、雛子」
「こんばんは。ジンライムちょうだい」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
「はーい」
ここは私の幼なじみ―長田稜平、通称稜ちゃんが個人経営しているバーだ。
決して広くはない店で、スツールは4つのみ。
嫌なことがある度、グチりに来てるから何かがあったのは彼にとっては明白だろう。
物的証拠が見つかったのがことの外ショックで、ただ飲んで忘れたかった。
「…で?今回は何事?」
オーダーしたジンライムを差し出しながら訊ねる稜ちゃん。
「男の人ってさ、やっぱり浮気するものなんだね」
「あー…みんながみんなって訳ではないと思うけど」
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