πρόλογος(プロローグ)

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 そして図書館の入口(わき)にある食堂で、犯罪まがいの夜遊びの相談をしている二人の屈強(くっきょう)な学生を柱の(かげ)に呼び出し、つぎのように指示した。  ――アジア方面から来たばかりの少女と、もし持っていたら書物と(あわ)せて捕まえてくるように。  学生の一人は血気(けっき)盛んな男。女好きですぐ暴力を振るう。体も大きく十歳になる前からさんざん殺傷沙汰(さっしょうざた)を繰り返してきたが、五代さかのぼるとアレクサンドロス大王の東征(とうせい)近衛兵(このえへい)として従軍したマケドニア軍人の家柄(いえがら)である。たとえ相手がギリシア人貴族だろうが、マケドニアの王族と軍人家系以外は蛮族(バルバロイ)であって、自分の快楽に奉仕(ほうし)するだけの存在と確信している。マケドニア流にこだわってワインを水で割って飲むことはせず、酔うと暴れ、親(ゆず)りの立派な肉体を誇示(こじ)するかのように素裸(すっぱだか)になり大立ち回り。そのたびごとに居合わせた者に口封じの金が配られるため、夜の歓楽街(かんらくがい)にいる男たちには人気者である。特に女の悲鳴に快感を得るらしく、女たちは一生消えない怪我(けが)を負い、街のはずれの娼婦街(しょうふがい)や国外へと流れていく。暴力以外の取り()は、街の犯罪集団にも顔が広いこと。
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