πρόλογος(プロローグ)

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 行け、という赤髪の男の合図で、不良学生たちは双子の猟犬(りょうけん)のように図書館の中庭を横切っていく。  図書館に五十名ほどいる学者たちのほとんどは読書したり、回廊(かいろう)を並んで歩きながらの議論、学生への講義、砂場に図形を描いて幾何学の証明、ホメーロスの暗唱、ライアーという弦楽器で(げん)の長さと音の高さの関係を調べたり、付属動物園で飼っている動物の観察に夢中で気づかないか、気に留めない様子。  一人だけ、食後の体操をしていた学者が走る学生たちの背中に向けて叫んだ。 ――おおい! どうした、アルキメデスみたいな大発見でもしたのか? 『見つけた(ヘウレーカ)見つけた(ヘウレーカ)』とね! あっはは……  二人の学生は振り返らず、図書館から人でごった返す通りに飛び出していった。  それを見届けた赤髪の男は、白大理石の柱に背をこすりつけながら座り込んだ。
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