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ペルセウスもメドューサとツーショットをしたんだろうか。こんなに背後の相手と接近したときには。
鏡の中で、日に焼けたジャンダリの褐色の上半身の向こうに主人の白い肩が規則正しく揺れている。
「ああ、なんという蠱惑的な……野生の香り……」
主人は黙ったかと思うとジャンダリの首に顔をうずめてきた。くすぐったく、ジャンダリの黒いぼさぼさの前髪が跳ね上がり、そして顔にかかって目を覆い隠す。
主人は今日はこのへんで果てそうだな、と思い、サポートするつもりで両足の間を引き締める。
が、主人がジャンダリの耳元で急にまじめな口調で言った。
「今日はベレニーケー様の祭日だな。何か買ってほしい書物はあるか?」
ジャンダリはびくっと反応してしまった。主人がなぜ突然その話題に入ったのかわからず答えなかった。それより主人の手の動きが気になった。
「今日は広場できっと書物の新作発表や掘り出し物があるぞ。著名作家自身の朗読もあるかもしれないな。今日は一ドラクマ分〔およそ一日の労働の給料分〕、おまえの好きな書物を買ってやる」
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