1 奴隷少年ジャンダリ

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 ペルセウスもメドューサとツーショットをしたんだろうか。こんなに背後の相手と接近したときには。  鏡の中で、日に焼けたジャンダリの褐色(かっしょく)の上半身の向こうに主人の白い肩が規則正しく揺れている。 「ああ、なんという蠱惑(こわく)的な……野生の香り……」  主人は黙ったかと思うとジャンダリの首に顔をうずめてきた。くすぐったく、ジャンダリの黒いぼさぼさの前髪が跳ね上がり、そして顔にかかって目を覆い隠す。  主人は今日はこのへんで果てそうだな、と思い、サポートするつもりで両足の間を引き締める。  が、主人がジャンダリの耳元で急にまじめな口調で言った。 「今日はベレニーケー様の祭日だな。何か買ってほしい書物はあるか?」  ジャンダリはびくっと反応してしまった。主人がなぜ突然その話題に入ったのかわからず答えなかった。それより主人の手の動きが気になった。 「今日は広場(アゴラ)できっと書物(ビブリオ)の新作発表や掘り出し物があるぞ。著名作家自身の朗読もあるかもしれないな。今日は一ドラクマ分〔およそ一日の労働の給料分〕、おまえの好きな書物を買ってやる」
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